ブログ!(徒然日記)

2025-12-04 22:05:00

となみ野高校で出会った、若者たちの眼差し

一杯入魂!仕事と私 ー

となみ野高校で出会った、若者たちの眼差し

2024年12月4日(木)、富山県立となみ野高等学校の家庭・福祉科にて、「一杯入魂!仕事と私」と題した特別講師をさせていただきました。

教室に足を踏み入れた瞬間

教室のドアを開けた瞬間、緊張した面持ちの高校生たちの視線が私に注がれました。16歳から18歳。自分がその年齢だった頃のことを思い出そうとしましたが、もうずいぶん昔のことです。いや、でも確かに自分もあの頃、同じように大人の話を聞きながら、心の中では様々な思いを巡らせていたはずです。

「将来、どうなるんだろう」 「このまま富山にいるのかな」 「海外に出てみたいな」 「でも、地元も捨てがたい」

そんな複雑な気持ちが、彼らの表情から透けて見えるような気がしました。

私が伝えたかったこと

私は高岡市出身で、伏木高校の国際コースを卒業後、アメリカで5年間留学しました。両親は寿司屋を経営していましたが、正直なところ、飲食業を継ぐつもりは全くありませんでした。でも人生は不思議なもので、今では妻とともにカフェ事業を営み、30名以上の仲間と一緒に働いています。

高校生たちに最も伝えたかったのは、シンプルだけど深い言葉でした。

「自分の人生を歩んでください。」

たくさん失敗して、たくさん痛い思いをして、そしてそれ以上にたくさん楽しくも成功体験を積んで欲しい。そこから学び成長してほしい。綺麗事に聞こえるかもしれませんが、これが本心です。私自身、富山の自家焙煎コーヒーロールケーキがテレビでバズって一晩で3,000件以上の注文が入り、対応に4ヶ月かかってしまった失敗や、完璧を求めすぎて苦しんだ経験など。その全ての過程が、今の私を作っています。と伝えました。 そして、最後に、「これが私の人生です。」と。

質疑応答で見えた、彼らの本音

講演後の質疑応答の時間。最初はシーンとしていましたが、一人の男子生徒が勇気を出して手を挙げてくれました。これから将来が不安と希望が沢山入り混じっています、と。私は自分の高校3年生から地元富山に帰って来る決断をした日までの経験を話しました。アメリカで学んだこと、帰ってきて地元で事業を始める事を決断したこと。そして今、地元の素材を使って、地元の人たちと、地元のお客様のために仕事をしている喜びを。

「出ていくことも、残ることも、どちらも正解だよ。大事なのは、自分が何をしたいか、どう生きたいかを考え続けることだと思う」

親として、大人として、感じたこと

私には3人の子供がいます。まだ小さいですが、いつか彼らもこの高校生たちのように、将来について悩む日が来るでしょう。その時、私は親として何を伝えられるだろうか。

教室を見回しながら、ふとそんなことを考えました。ここにいる生徒たちにも、心配する親がいる。地元に残ってほしいと願う親もいれば、もっと広い世界を見てほしいと思う親もいるでしょう。

私自身、アメリカに行った時、両親は何を思っていたのだろう。寿司屋を継いでくれると期待していたかもしれません。でも、彼らは私の選択を尊重してくれました。そして今、巡り巡って、私は飲食業に携わっている。人生は本当に不思議です。

講演の最中、一人の生徒がずっとメモを取っていました。真剣な眼差しで、私の言葉を一言一句逃すまいとしている様子が印象的でした。あの姿勢、その真摯さが、きっと彼女の未来を切り開いていくのだろうと思いました。

若者との対話が教えてくれること

正直に言えば、最初はこの講演を引き受けるのに躊躇がありました。自分の話なんて、高校生の役に立つだろうか。もっとすごい人、もっと成功した人の話を聞いた方がいいんじゃないか。

でも、終わってみて思うのは、私が彼らに何かを教えたというより、彼らから多くのことを教わったということです。

彼らの不安、希望、夢、葛藤。富山を出たいという気持ちと、地元への愛着との間で揺れる心。そういった複雑な感情に触れることで、私自身、初心を思い出しました。

いつの間にか、日々の業務に追われ、当たり前になっていた地元での仕事。でも、それは決して当たり前のことではなかった。選択の連続の末に、今がある。そのことを、高校生たちが気づかせてくれました。

モラトリアムという貴重な時間

高校生という時期は、社会に出る前の貴重なモラトリアムです。まだ何者でもないけれど、何者にでもなれる。その可能性に満ちた時間を、彼らは今、生きています。

ある生徒は「地元に貢献したい」と言いました。別の生徒は「一度は外に出てみたい」と言いました。どちらも素晴らしい。どちらも正しい。

私が伝えたかったのは、どちらを選んでも、大切なのは「自分の人生を歩む」ということです。親のため、友達のため、世間体のため。そういう理由で選択することもあるでしょう。でも、最終的には、自分が納得できる道を選んでほしい。

失敗してもいい。完璧を求めすぎた時期、たくさんの間違いを犯してきました。でも、その一つ一つから学び、変化に順応してきました。

ダーウィンの進化論にもあるように、生き残るのは最も強いものでも、最も賢いものでもなく、変化に最も適応できるものです。これは仕事だけでなく、人生そのものに当てはまります。自分と関係のある人たちから「あたわった」役割をしっかりと果たす。これこそが最善の生き方ではないだろうかと今は思います。

帰り道に思ったこと

講演を終えて学校を後にする時、担当の先生が伝えてくれました。「私も実は学校の先生になりたくてなったわけじゃないんです。なるべくしてなったんだなと。生徒たちも、普段になく、真剣に話を聞いていました。心に残る授業になったと思います。」と声をかけてくれました。

令和7年初積雪の富山の空は、相変わらず美しく、どこか切なくもありました。この景色の下で、何人もの若者が夢を描き、悩み、成長していく。そして私も、まだまだ頑張らなければいけない。

これからの私、これからの若者たち

高校生たちとの触れ合いを通じて、改めて思いました。私たち大人の役割は、若者に道を示すことではなく、彼らが自分の道を見つけるのを応援することだと。

地元に残る選択も、外に出る選択も、どちらも素晴らしい。大切なのは、その選択に責任を持ち、自分の人生として歩んでいくことです。

私自身、3人の子供の父親として、事業経営者として、これからも地元富山で挑戦し続けます。若者たちが「あの人みたいになりたい」とまでは言わなくても、「地元でも面白いことができるんだ」と思ってくれたら、それで十分です。

となみ野高校の生徒の皆さん、先生方、本日は本当にありがとうございました。皆さんとの出会いが、私に新たなエネルギーをくれました。

そして、これからの人生、様々な選択を迫られるでしょう。でも、どうか恐れずに、自分の心に正直に、一歩一歩進んでいってください。

たくさん失敗して、たくさん学んで、そして自分らしい人生を歩んでください。

私も、一杯入魂の精神で、これからも地元富山で、コーヒーとともに、皆さんの未来を応援し続けます。

いつか、どこかで、また会えることを楽しみにしています。

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