ブログ!(徒然日記)
2026-10-17 01:34:00
白鳩会の皆様と過ごした、5年目の「ひとやすみ」
たかがコーヒー、されどコーヒー。白鳩会の皆様と過ごした、5年目の「ひとやすみ」
今年もこの季節がやってきました 。 砺波総合病院の看護師会の皆様による組合、「白鳩会」様からお声がけをいただいて毎年開催しているコーヒー教室も、気づけば今年で丸5年になります 。
病院のお仕事というのは、私たちが普段暮らしている日常とは少し違う、いつもどこか張り詰めた「非日常」の連続なのだと思います 。命と向き合い、気を配り、自分のことは後回しにして走り続けておられる看護師の皆様。 そんな皆様の日頃の労をねぎらう慰安会や福利厚生の一環として、また外部のいろんな講師から学ぶ場として、本年も私たち「19HITOYASUMI」をお招きいただきました 。
毎年、どんな切り口でお話ししようかとスタッフみんなであれこれ考えるのですが、私の胸の奥にある「裏テーマ」は1年目からずっと変わっていません 。 それはもう、ただ一つ。「看護師の皆様への癒し」です 。
お仕事を終えて集まってくださった方、あるいはこれから夜勤や業務に向かわれる方の肩の力が、コーヒーの香りでふっと抜けるような、そんなおもてなしの1時間を作りたい 。その一心で、今年もたくさんの器具と豆と、焼きたてのお菓子を車に積み込んで会場へ向かいました 。

なくても生きていける。でも、ないと世の中は殺伐とする
「皆様、お疲れ様です。19HITOYASUMIの渡邉です」
会場を見渡すと、1日の業務を終えて少しほっとされた表情や、大変な1日を終えての疲れの残る表情が並んでいます 。
まず自己紹介から始めさせていただきました。
「私がこのコーヒーやカフェの仕事に携わるようになって、もう24年ほどになります 。 もともとのルーツは高岡市戸出(といで)で、親の代から50年近く続けている寿司・和食の店です 。そこから、この砺波総合病院のすぐ近く――昔は市の体育館があって、今は新しい図書館が建っている向かい側で「一休み」を始めて17年目になりました 。 初めて砺波にお店を出したときは「なんて都会なんだろう、どうしようかな」とドキドキしていたのを今でも思い出します 。
その後、南砺市福野のアミューの中でお店を始めて12年 。5年前からは高岡大仏のすぐ横で「amidacoffee」という店もやっています。毎日お店に行くたび、大仏さんに見守られているようで、なんだか心が洗われるような、ありがたい気持ちになる場所です 。 そして今年の6月には、富山市総曲輪(そうがわ)にも小さなコーヒースタンドを出しました 。
昔、学生の頃は総曲輪へ遊びに行くのがすごく楽しみでしたよね 。今は郊外に大きなショッピングセンターができて街中を歩く機会が減った方も多いかもしれませんが、実は今、あの界隈には私たちのような「小さな尖った個人店」がいくつも集まっていて、歩いてみるとすごく刺激的で面白いんです 。呉西(県西部)の優しい薄味の出し汁の文化で育った私たちが、少し濃いめの味覚が好まれる呉東(県東部)の文化の中で、どうやったら喜んでもらえるだろうかと試行錯誤する毎日も、また大きな挑戦になっています 。
や、うちで一番売りたい看板商品は、実は高岡産の小麦粉と小矢部の平飼い卵を使った「手作りのクッキー」です 。庄川の柚子や富山の干し柿、ときには白エビや昆布なんていう地元の尖った食材をお菓子に仕立てて、それを一番美味しく引き立てるために、私はコーヒーの焙煎を始めました 。」そのようにスタートしました。
そして、核心のコーヒー教室の部分です。「正直なところ、コーヒーやお菓子なんて、なくても生きていけるものです 。お腹が膨れるわけでもないし、栄養の塊でもない 。 むしろ摂取のしすぎは体にそんなに良くない。でも、もしこの世の中からコーヒーや甘いお菓子が全部消えてしまったら、きっとすごく殺伐とした世知辛い世界になってしまうと思うんです 。
美味しい一杯とお菓子が真ん中にあるだけで、人と人との輪が広がったり、どうでもいいくだらない話で笑い合えたりする 。そんな「人生やコミュニケーションの潤滑油」として機能するからこそ、たかがコーヒー、されどコーヒーなんじゃないかな、と 。そんな想いで、私たちは毎日お店に立っています 。」と。
1玉30円のスーパーで特売販売の焼きそばが、最高のご馳走になる理由
この日、皆様のお手元には最初から4種類のコーヒーを小さなカップでお配りしました 。 レモンティーのように優しくて華やかな「エチオピアの浅煎り」 。 大地や森の香りがして、絹のように舌にまとわりつく男性的な「マンデリンの浅煎り」 。 そして、4種類の豆を4:3:2:1で混ぜ合わせ、スター選手だけでなく縁の下の力持ちも配置してチーム戦で味を作った「一休みブレンド」の浅煎りと深煎りです 。
「深煎りが好きですか? 浅煎りが好きですか?」と会場で手を挙げていただくと、やはり昔ながらのどっしりした深煎りが人気でしたが、最近はフルーティーな浅煎りが好きだという方も確実に増えてきました 。 よく「深煎りは濃くて、浅煎りは薄い」と思われがちですが、実は違います 。焙煎の浅い・深いは「味の方向性(フルーティーか、ナッツやチョコのような香ばしさか)」の違いであって、濃い・薄いを決めるのは単純に「豆とお湯の量のレシピ」なんです 。
そんなお話をしながら、ここ3〜4年で世界のコーヒー業界に起きた「激震」についてお話ししました 。
実は私も、コーヒーの味覚を評価して点数をつける国際資格を持っているのですが、これまでのコーヒー業界は、知識や資格を持った一部の専門家が「この豆は90点だから素晴らしい」「希少で酸味が際立っているから高いんだ、だから美味しいんだ」と決めて、それが絶対的な基準になっていました 。
ところが数年前、世界のコーヒー協会がその仕組みをガラッと180度変えてしまったんです 。 新しい基準(CVA)が言ったのは、「美味しいかどうかを決めるのは、専門家ではなく、飲む人自身だ」ということでした 。
最初にそれを聞いたとき、私は「えっ、今まで私たちが勉強してきたことは何だったの?」と戸惑いました 。でも、よくよく考えてみれば、本当にその通りなんですよね 。
どっしりした深煎りが大好きな人に、レモンティーみたいな浅煎りを出して「これ、すごく高くて90点の豆だから飲みなよ!」と押し付けたって、飲む人からすれば罰ゲームでしかありません 。逆も同じです 。敬老会のお祝いで、生クリームたっぷりのケーキを食べるおじいちゃんおばあちゃんに、酸っぱいコーヒーを出しても喜ばれませんよね 。
私がよくお話しする例えがあります 。 スーパーの特売で買った1玉30円の焼きそばを、庄川の河川敷で気の合う仲間たちとワイワイ鉄板を囲んで食べたとします 。片や、最高級の輸入小麦を使った1玉600円の高級焼きそばがあったとして、どっちが心から「うわ、美味しい!」と感じるでしょうか ? きっと、河川敷でみんなと笑いながら食べた30円の焼きそばの方が、記憶に残る美味しさになるはずです 。要は最高級の焼きそばが30円の麺の味わいよりも20倍の味まではしないと言う意味です。
味覚というのは、どこまでもその人の「主観」であり、飲む場所や時間、体調、そして「誰と飲むか」という情景と切り離せないものなんです 。 これってきっと、医療の現場でも同じではないでしょうか 。先生や病院側が一方的に決めるのではなく、患者さん一人ひとりと対話しながら、その人にとって一番いいケアを探していく流れとすごく似ているなと私は感じています 。
だから、コーヒーに詳しい人がうんたらかんたら言っている知識なんて、聞き流してしまっていいんです 。大切な誰かが自分のために淹れてくれたコーヒーなら、たとえ少し味がズレていたって「美味しいね」と思えれば、それが100点満点の正解なんです 。
「酸っぱいコーヒーが苦手」の正体と、食べ合わせの実験
とはいえ、日々の暮らしの中で「なんだか心が忙しくて余裕がない」と、味をじっくり噛み締めることってなかなかできませんよね 。そうすると、どうしても「うまい・まずい」「苦い・酸っぱい」という単純な見方になってしまいます 。
会場でも「私、酸っぱいコーヒーは苦手なんです」という方に手を挙げていただきました 。たくさん手が挙がりました 。 でも、「じゃあ、みかんやリンゴ、グレープフルーツジュースは嫌いですか?」と聞くと、「いえ、普通に好きです」とおっしゃるんです 。
実は、多くの方が「嫌いだ」と感じている酸っぱさの正体は、コーヒー本来の果実感ではなく、豆が古くなって空気に触れ続けたことで起きる「酸化(劣化)」の味なんです 。封を開けて何ヶ月も放置したオリーブオイルがイガイガして臭くなるのと全く同じで、コーヒー豆も鮮度が命の「生鮮食品」であり「フルーツの種」です 。
本当に新鮮で、適切に焙煎・抽出されたコーヒーは、お湯が冷めて自分の体温(36〜37℃)に近づいたときにこそ本領を発揮します 。 銀行やよそのお宅で「どうぞ」と出されたいつ淹れたか分からないコーヒーを飲んで、「うわ、早くお水で口をすすぎたい」「砂糖とミルクをどっさり入れてコーヒー牛乳にしないと飲めない」と我慢して飲み干した経験、私もたくさんあります 。あれは劣化した雑味が出ているからです 。 でも、今日お配りしたコーヒーは、話の途中で冷めてぬるくなっても、まるでレモン果汁やフルーツジュースのように、喉に引っかからずスッと甘く飲めたはずです 。
そんな味覚の奥深さをさらに楽しんでいただこうと、会場の電気を少し明るくして、今年は9種類のおやつ(ミルクチョコ、カカオ70%のハイカカオチョコ、アーモンド、マカダミア、くるみ、マンゴー、レーズン、バナナチップ、そして干し柿のような黒糖感があるナツメヤシの実・デーツ)と、4種類のコーヒーの「食べ合わせ(ペアリング)」を実験していただきました 。
「鼻をつまんで飲んでから、パッと指を離してみてください。喉の奥から鼻に抜ける香りで、味が全然変わりますよ」 「これとこれは合うなと思ったら二重丸、喧嘩してるなと思ったらバツをつけてみてくださいね」
最初は静かだった会場が、おやつをかじり、コーヒーをすすり始めると、「えっ、これとこれ合う!」「うわ、ハイカカオとエチオピア、口の中でトゲトゲしてバラバラになる!」と、グループごとに賑やかな声と笑顔が弾け始めました 。
せっかく美味しいイタリアンや和食を食べに行って、最後のデザートとコーヒーの相性が悪くて「なんだか後味がリセットされちゃったな」と残念な気持ちになることがありますよね 。 難しく考える必要はなくて、
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酸味のあるフルーティーな一杯には、同じ方向の「ドライフルーツ」を寄せる
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深煎りの苦い一杯には、たけのこの里でも何でもいいので「ミルクチョコ」をひとかけ添える
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迷ったときは、油分で舌を優しく包んでくれる「ナッツ」を置いておく
この3つを知っているだけで、お家でのコーヒータイムの幸福感はぐっと長続きします 。

子どもの誕生日に、カレールーを2倍にはしない
最後のプログラムは、お家や職場でもできる「美味しいハンドドリップ」の実践です 。
「今日は給料日だから、コーヒーの粉を2倍にして贅沢に淹れよう!」なんてことをつい雰囲気でやってしまいがちですが、お子さんの誕生日だからといって、カレーのルーをいつもの2倍入れたりはしませんよね ? 味の骨格が崩れて大変なことになります 。
コーヒーにもちゃんと物理的な限界値があって、黄金比率は「1:16」と決まっています 。 豆15gに対して、注ぐお湯は250cc 。 そして、お湯はヤカンから粉、ドリッパー、サーバー、カップへと5箇所を通過するたびに、1箇所につき7〜8℃ずつ、最大で40℃近くも温度が奪われてしまいます 。これからの寒い季節、100℃のお湯で淹れても60℃のぬるいコーヒーになってしまうので、最初にペーパーにお湯を通して器具を温める「余熱(リンス)」が何より大切です 。
淹れ方は、誰でも毎日安定して75点〜80点が出せる「3投式」をお伝えしました 。
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最初の30秒で50cc(赤ちゃんをあやすように優しく「の」の字を書いて蒸らす)
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次の30秒でさらに50cc(最初の1分間で注ぐこの100ccが、お茶でいう「一番茶」の美味しいエキスになります)
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1分〜1分半の間に、残りの150ccを急ぎ足で一気に注ぐ(後半の雑味を出さず、2分半ほどでサッと落とし切る)
私とスタッフで一度実演したあと、「どなたか4名、前に出て淹れてみませんか? 腕に自信がなくても大丈夫ですよ!」とお声がけすると、少しの遠慮のあと、4名の看護師さんが笑顔で前に出てきてくださいました 。
「最初にトントンと粉をならして空気溜まりを抜いてくださいね」 「はい、タイマースタート! まずは50ccですよ」 「1分経ちました、ここからはラッシュです! 急ぎ足で250ccまで持っていきましょう!」
私が横から慌ただしく声をかける中、皆様本当に真剣な眼差しで、ケトルを傾けてお湯を注いでくださいました 。 面白いもので、ハンドドリップというのはその人の性格がそのまま出ます 。せっかちな人はせっかちな味になり、慎重で丁寧な人は丁寧な味になる 。ちなみに私はもともと雑な性格なので、仕事では意識してルーティンを守り、丁寧に淹れるように自分を律しています 。
4名とも、見事に2分半ほどで美しいコーヒーがサーバーに落ち切りました 。 淹れたてのサーバーを持ってそれぞれのテーブルへ戻り、同じグループの仲間にカップへ注いで振る舞う姿 。 「わぁ、美味しい!」「さっきのとまた味が違うね!」 湯気の向こうで笑い合う皆様のお顔を見て、私は心の中で「ああ、今年も来て本当によかったな」とじんわり温かい気持ちになっていました 。

「あなたに淹れてほしい」と言われる人生の楽しみを
最後に、会場の皆様にこんなお話をさせていただきました 。
やっぱり、「誰かが自分のために淹れてくれたコーヒー」って、それだけで美味しいんですよね 。
コーヒーというのは、一度知れば一生涯付き合っていける楽しみであり、財産になります 。 お家でケーキを買ってきて「みんなで食べようよ」となったとき、たとえ反抗期のお子さんであっても、「お父さん(お母さん)の淹れるコーヒーは美味しいから、あなたが淹れてよ」なんて言われたら、やっぱりちょっと嬉しいじゃないですか 。会社なんかでも一緒じゃないでしょうか、〇〇さんの入れたコーヒーは本当においしいから〇〇さん入れてよ!なんて言われたらうれしいじゃないですか。そういうふうに言われたいじゃないですか。
私は職業柄、こうして前に立って少し細かい仕組みや知識もお話ししましたが、本当はグルメぶった難しいことを言いたいわけではありません 。 ただ、毎日大変な現場で働いておられる皆様が、これからも続く長い人生の中で、「あ、このコーヒー美味しいな」「なんだかホッとするな」と自分の感覚で味わい、安らげる時間を一つでも多く持っていただけたら 。そのお手伝いが少しでもできたなら、これ以上の喜びはありません 。
私たち「19HITOYASUMI」は、1年365日、休みなくお店を開けています 。 お仕事帰りに「ちょっと疲れちゃったな」というときや、お休みの日にふっと息をつきたくなったときは、いつでも「一休みしに来たよ」と気軽にお店を覗いてみてください 。 焼きたてのクッキーと、丁寧に入れた一杯を用意して、いつでもお待ちしております 。
白鳩会の皆様、5年目の今年も本当にありがとうございました 。 これからお仕事に向かわれる方も、どうかお気をつけて 。皆様の毎日に、これからも温かなコーヒーの香りと笑顔が寄り添っていますように 。


