ブログ!(徒然日記)
おいしいコーヒーは、むずかしくない!高岡市守山公民館でコーヒー教室をさせていただきました。
最初にお伝えしたかった「守破離シュハリ」
冒頭でお話ししたのは、千利休の言葉とされる「守破離」です。最近学んだことの中で、これだけは絶対に皆さんに伝えたいと思っていました。
「守」は、まず基本を知り、守ること。「破」は、ぐちゃぐちゃに壊すことではなく、殻を破って初めて中身が見えてくる、ということ。そして「離」は、基本をベースにしながら自分らしさへとつなぎ、さらに次の人へバトンを渡していくこと。この話を聞いたとき、まさに嗜好品の世界そのものだと感じました。
とはいえ、この日のゴールはあくまで「お家で楽に、簡単においしく入れられること」です。コーヒーそのものが主役なのではなく、コーヒーをきっかけに人が集まり、つながる。公民館のような場所に、まずいコーヒーよりおいしいコーヒーがあったらいいよね、くらいの気持ちでいいんです。だから、あまり難しく考えないでくださいね、とお伝えしてから始めました。
おいしいコーヒーの4つの条件
「おいしいコーヒーって、どんなコーヒー?」これは永遠の問いですが、スペシャルティコーヒーには世界基準の定義があります。
一つ目は甘み。砂糖の甘さではなく、お米を噛むほどに感じる甘さや、黒糖のように素材から伝わってくる甘さです。二つ目は果実感、つまり酸味。三つ目は、包まれるような優しさ。四つ目はきれいさ。後味がすっきりしていて、えぐみや雑味がないことです。そしてこれらはすべて、コーヒーがもともと「フルーツ」であることに由来しています。
「酸っぱいコーヒーは苦手」という方は、実は少なくありません。そんな方には「オレンジジュースやグレープフルーツ、今の時期なら梨はお嫌いですか?」とお聞きしています。どれもフルーツの酸味ですよね。苦手と感じる酸っぱさの多くは、ウォーマーの上に半日置かれたような、劣化・酸化したコーヒーのことなんです。
この日お出ししたエチオピアは、コーヒーというより、レモンティーや紅茶のように感じた方もいらっしゃったと思います。スペシャルティコーヒーが世界中で広まった理由の一つが、このエチオピアのコーヒーでした。ちなみに、浅煎りほどフルーティーに、深煎りほどチョコレートやナッツのような風味に寄っていきます。
もう一つの目安が「冷めてもおいしいか」です。温かいうちは苦みやロースト感が前に出ますが、ぬるくなると甘みや酸味が顔を出してきます。冷めても何度も口をつけたくなるなら、それはおいしいコーヒーだった、ということです。
焙煎は調理、豆は生鮮食品
焙煎を仕事にしている私にとって、焙煎は「調理」です。私はいつも、自分がおいしくしてやろうと思うのではなく、この豆はどんな火の入れ方で、どこで止めてあげるとおいしくなるのかを、豆に聞くように心がけています。
そして、ぜひ覚えておいていただきたいのが、コーヒー豆は生鮮食品だということ。開けた炭酸飲料を何日も置いておかないのと同じで、豆は挽いた瞬間から香りが飛び、酸化が一気に進みます。お店では注文を受けてから挽き、挽いた粉は5分、10分以内に使い切るようにしています。
ご家庭で粉を買われるのも、もちろん構いません。その場合はジップ袋に入れて冷凍庫へ。それから、夏の炎天下の車内に置きっぱなしにするのも禁物です。いただいた和牛やブリなら絶対にしないことでも、コーヒーだとついやってしまいがちなんですよね。
水によっても味は変わります。ヨーロッパに多い硬水で入れると硬いコーヒーに、日本のような軟水寄りの水で入れると柔らかく優しいコーヒーになります。当店ではコーヒーカードで、その一杯がどの国のどのエリアの、どんな標高の農園で作られた、どんな品種なのかもお伝えしています。産地を思い浮かべながら飲めば、卓上で世界旅行ができるのも、コーヒーの醍醐味です。
食べ合わせで、味はこんなに変わる
中盤には、テーブルに用意した9つの食材とコーヒーの食べ合わせを体験していただきました。チョコレートは甘さで抑え、ナッツは油分で包んで角を丸くし、ドライフルーツは味の方向性をそろえてくれます。
ぴったりペアの代表は、ドライマンゴーとエチオピア。酸味の性質が似ているので、それぞれ単体のときより味がぐっと伸びます。逆に、カカオ70%のチョコレートとエチオピアはけんかしてしまいます。深煎りにはミルクチョコレートをひとかけ。迷ったら、ブレンドとナッツを用意しておけば大丈夫です。ナッツは浅煎りにも深煎りにも合う万能選手です。
当店の一休ブレンドは、4種類の豆を組み合わせています。スター選手ばかりのオールスターチームが必ずしも強いとは限らないように、最初に個性を出してくれる味、中盤を支える味、最後にふわりと包んでくれる味が、それぞれの持ち場を守る。そんなチームを編成するのがブレンドなんです。
家で入れるための「1対16」
いよいよ抽出です。ひとつだけ覚えていただくなら、粉とお湯の黄金比率「1対16」。私たちは1杯に15gをおすすめしていて、15×16で240になります。これを基本に、普段お伝えしているのがこのレシピです。
・0〜30秒:50ml注いで蒸らす
・30〜60秒:さらに50ml(合計100ml)
・60〜90秒:150ml(合計250ml)
・あとは落とし切り。出来上がりは約200ml
最後に急いで注ぐのには理由があります。コーヒーの成分はピラミッドのように、おいしい成分ほど先に、嫌な成分ほど後から出てきます。だから最初は丁寧に、最後は急ぎ足で。2杯分なら粉30gで倍量にしてください。
お湯の温度は88〜93℃が目安です。93℃だと酸味が立ち、88℃くらいだとより優しく甘みが出ると言われています。お湯はその都度沸かした新鮮なものを使い、器具は清潔に。お湯は豆やドリッパー、サーバー、カップを通るたびに温度が下がるので、器具を温めておくのも効果的です。ペーパーをお湯でリンスすると、紙の匂いが抑えられてクリアな味になります。
落ち切りの目安は2分15秒ほど。3分経ってもポタポタ落ちているなら挽き目が細かすぎ、2分より前に止まってしまうなら粗すぎるサインです。
それぞれの一杯から
デモンストレーションのあとは、各テーブルの代表の方に実際に入れていただき、グループの皆さんに振る舞っていただきました。スケールで粉を量り、トントンと平らにならして、タイマーをスタート。慌てなくて大丈夫です、とお声がけしながら見守りました。
よく「せっかちな人はせっかちなコーヒーに、慎重な人は慎重なコーヒーになる」と言われます。レシピ通りにいかなくても、ダメなわけではありません。少し味に角が出るだけで、それもその人の個性です。分ける前にサーバーをくるくると回して、濃さを均一にするのもお忘れなく。
結局、いちばんおいしいのは
3年ほど前、コーヒー業界ではおいしさを決めるのは専門家の権威ではなく、飲む人自身の主観だ、という大きな転換がありました。スーパーの30円の焼きそばでも、気心の知れた仲間と河川敷で鉄板焼きにすれば、どんな高級品にも負けないくらいおいしいですよね。誰と、どんな場で味わうかも含めて「おいしさ」なんです。
だからこそ、誰かが自分のために入れてくれたコーヒーはおいしい。それが一つの答えだと、私は思っています。
最後のご質問では、市販のドリップパックについてお話ししました。入れ方も大切ですが、味の7〜8割を左右するのはやはり豆そのものです。
コーヒーは目に見えないもので、私たちスタッフも毎日が勉強です。分からないことがあれば、いつでもお店で気軽に声をかけてください。ご参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました。




